- 褒めても叱っても部下・後輩の主体性が育たない…
- アドラー心理学って難しそう。現場でどう活かせばいい?
- 部下とのコミュニケーションで、つい感情的になってしまう
- チームメンバーの自律性を高め、生産性を上げたい

しろろ
こんにちは、しろろです。
あなたは今、部下や後輩の育成に関して、悩みを抱えていませんか?
「一生懸命褒めているのに、言われたことしかやらない」 「厳しく叱ったら、萎縮してしまい、かえって動かなくなった」 「どうすれば、もっと自主的に考えて行動してくれるようになるんだろう…」など、困ることはありますよね。
私も以前は、同じような壁にぶつかっていました。
後輩の成長を願うほど、どう接すればいいのか分からなくなる。そんな時に出会ったのが、精神科医アルフレッド・アドラーが提唱した「アドラー心理学」でした。
アドラー心理学の入門書として有名な『嫌われる勇気』を読んだとき、私は衝撃を受けました。
そこには、「褒めてはいけない・叱ってはいけない」12という、従来の育成論とは真逆の考え方が提示されていたからです。

しろろ
では、どうやって人を育てれば良いのでしょうか?
最初は戸惑いましたが、アドラーの教えを深く学ぶうちに、これが部下の「自立心」と「主体性」を最大限に引き出す、まさに本質的な育成法だと確信しました。
この記事では、アドラー心理学の核心である「褒めない・叱らない」育成術を、私の実体験も交えながら具体的に解説します。
単なる理論に留まらず、あなたの職場の人間関係やチームの生産性を劇的に変えるヒントがきっと見つかるはずです。
前回の投稿では、アドラー心理学でポイントとなる考え方を紹介しました。ご興味がありましたら、ご確認いただけますと幸いです。
アドラー心理学が描く教育の本質
アドラー心理学では、人々の自立と社会への調和を教育の目的としています。
そのためのポイントは、以下の2種類の目標に分かれています。
- 行動面の目標
- 自立する
- 社会と調和して暮らす
- 心理面の目標
- 「私には能力がある」という意識をもつ
- 「人々は私の仲間である」という意識をもつ
教育において、これらの目標を達成することが大切です。
向上心を利用して、自立を促進する
人は「現状をより良くしたいという向上心」を持っています。
たとえば、新入社員が早く活躍したいと思うのは、向上心の表れです。
後輩が一人前のビジネスパーソンになるよう、フォローしましょう。
人間知を習得して、社会と調和する
仕事のスキルだけでなく、自身や相手のあるべき姿を理解する「人間知」も学ぶ必要があります。
職場では大勢の他者がいるので、協力して働くために、人間を知る必要があるからです。
アドラー氏は、人間の悩みは全て「対人関係」によるものだと考えました。
業務ができるようになっても、人との関りで悩み、生きづらさを感じる人が大勢います。
同僚と良好な関係を築くために、人についても学ぶ必要があるのです。
なぜ「褒めること・叱ること」を否定するのか?アドラー心理学の衝撃
アドラー心理学の最も特徴的な教えの一つが、「褒めること・叱ること」を否定する点です。
私たちはつい、部下の良い行動を褒め、悪い行動を叱ってしまうものですが、アドラーはここに警鐘を鳴らします。
賞賛・叱責の「隠れたメリット」
一見すると、褒めたり叱ったりすることはメリットがあるように思えます。
その背景には、人が共同体の中で「自分の居場所を確認したい」「認められたい」という根源的な欲求があるからです。
例えば、良い行動を褒められれば「自分は貢献できている」と感じ、特別な存在だと認識できます。
また、たとえ叱られたとしても、「無視されるよりは良い」「自分に注目してくれている」と感じ、共同体の中に居場所があることを確認しようとするケースもあるのです。
賞賛・叱責の「致命的なデメリット」
アドラー氏はこれらのメリットの裏に潜む致命的なデメリットを指摘します。
褒めることが「競争」と「依存」を生む理由
「褒められるために頑張るならいいじゃないか」と思うかもしれません。
しかし、褒賞を目的とした行動は、共同体内に競争を生み出します。
例えば、営業成績を褒められたいがために、同僚の足を引っ張ったり、不正な手段に走ったりする可能性も出てきます。
人々が協力し合うべき共同体において、過度な競争はむしろ問題行動に繋がるのです。
さらに、褒められることに慣れてしまうと、部下は「褒められないと行動できない」という依存的な姿勢に陥ってしまいます。
上司の評価を基準に行動するようになり、自ら考え、判断する力が育ちにくくなるのです。

叱ることが「暴力」であり「不信感」を招く理由

しろろ
声を荒げたり、物を蹴ったりして相手を威圧し、自分の主張を押し通そうとする人が職場にいませんか?
たとえ手を上げていなくても、これらは時間も労力もけずに自分の要求を押し通す暴力的なコミュニケーションです。
アドラー氏は、「叱責」を「安直な暴力」と捉えます。
冷静に叱っているつもりでも、受け手は「攻撃されている」と感じやすく、結果として上司・先輩社員への不信感を募らせ、信頼関係が壊れる原因になります。
部下は表面上従うかもしれませんが、それは恐怖心からであり、決して主体的な行動ではありません。

「褒めること」「叱ること」は、短期的な効果はあるように見えても、長期的には部下の自律性を阻害し、健全な人間関係を築く上で大きな障害となるのです。
共感・感謝による育成アプローチ
では、褒めず、叱らずに、どうすれば部下を育て、主体性を引き出すことができるのでしょうか。
その答えは、「共感」と「感謝」をベースにしたコミュニケーションにあります。
ここでは、私が実際に職場で実践し、効果を実感した3つのステップをご紹介します。
ステップ1:ありのままの他者を受け入れる
社会心理学者エーリッヒ・フロム氏は、下記の言葉を残しました。
尊敬とは、人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のことである
尊敬とは、その人が、その人らしく成長発展していけるよう、気づかうことである
私たちはつい、目の前の部下を「自分の理想の型」にはめ込もうとしてしまいがちです。
しかし、アドラー心理学では、相手を「変えようとする」のではなく、「そのままの相手」を認め、その人自身の価値を見出すことが重要だと考えます。
部下が「そのままの自分」を認められていると感じることで、自己肯定感が向上し、それが前向きな成長へと繋がります。
①相手の関心事に興味を持つ
部下の趣味や興味について尋ね、たとえ自分にはつまらないと感じる内容でも、否定せずに耳を傾け、共感する姿勢を見せましょう。
②「私メッセージ」で伝える
相手の行動を評価するのではなく、「私は~と感じた」「私は~だと思う」と、主語を「私」にして自分の意見を伝えます。
ステップ2:賞賛ではなく、「事実+感謝」で具体的なフィードバックを伝える
部下の行動に対してフィードバックする際、「すごいね!」「よくやった!」と漠然と褒めるだけでは、部下は何を褒められたのか具体的に理解できません。
具体的な「事実」と「感謝」をセットで伝えることを推奨します。
例えば、後輩の活躍で仕事が成功した場合を考えます。上司は下記の言葉をかけました。

上司A
よくやった。すごい。
上司Aの誉め言葉は、相手の上辺しか見ていない印象を受けます。

上司B
依頼者への丁寧な説明のおかげでプロジェクトが成功しました。ありがとうございます。
①具体的な行動の「事実」を伝える
「丁寧な説明」という具体的な行動に焦点を当てる。
②それがもたらした「結果」を伝える
「プロジェクトが成功した」という良い結果を伝える。
③「感謝」の気持ちを伝える
「ありがとうございます」と、その行動が自分やチームにどう貢献したかを伝える。
本人は自分の努力が正当に評価されているこのようにフィードバックすることで、部下は「自分の努力が正当に評価された」と実感し、次の行動への明確なモチベーションに繋がります。
これは、上司が部下を「評価する」のではなく、「貢献を認める」という姿勢の表れです。
ステップ3:問題は「一緒に考える」ことで解決する
部下がミスをしたり、問題を起こしたりした時、私たちはつい「なぜこんなことをしたんだ!」と感情的に叱ってしまいがちです。
しかし、それでは部下は萎縮し、問題の根本的な解決には繋がりません。
問題が起きた際は「叱る」のではなく、その背景や理由を「共に考え」、一緒に解決策を見出すことを重視しましょう。
たとえば、後輩がデスクの整理を怠っている場合を説明します。

上司A
なにをやっているんだ。片付けろ。
上司Aの発言は、相手に共感せず、自分の価値観を押し付けています。相手は怯えて委縮してしまう可能性があります。

上司B
デスクの片付けをよく忘れてるようだけど、理由があるのかな?

部下
申し訳ありません。
仕事でいっぱいいっぱいになると片付けられなくて…。

上司B
仕事が忙してくても、デスクを片付けられる方法を一緒に考えてみようか。
〜デスクのきれいにする方法を検討中〜

上司B
では、〇〇で対応していきましょう。
一緒に考えてくれてありがとうございます!
①「なぜ?」ではなく「何か理由があるのかな?」と、相手の状況を理解しようとする問いかけ
部下が話しやすい雰囲気を作る。
②「一緒に考えてみようか」と、対等な関係で問題解決に取り組む姿勢
部下の主体性を引き出す。
③「ありがとう」と、共に解決したことへの感謝
信頼関係を深め、次も一緒に頑張ろうという気持ちにさせる。
このアプローチにより、部下は「自分のことを理解しようとしてくれている」と感じ、自ら解決策を模索する力が育ちます。
結果的に、単なる一時的な改善ではなく、自律的な成長を促すことができるのです。
まとめ
アドラー心理学が提唱する「褒めない・叱らない」育成術は、決して無責任な放任ではありません。
むしろ、部下の「自律性」と「共同体感覚」を育むための、深く、そして効果的な指導術なのです。
この記事で紹介した3つのステップを実践することで、部下やチームメンバーは、指示を待つのではなく、自ら考え、行動し、そして貢献する喜びを感じるようになるでしょう。
ありのままの受容
相手自身の価値を認め、その存在を尊重する姿勢が、部下の自己肯定感を育みます。
事実+感謝のフィードバック
具体的な行動とその貢献に感謝を伝えることで、部下は自身の成長を実感し、主体性が向上します。
共に考える姿勢
問題が起きた際は、叱責ではなく、一緒に解決策を見出すことで、信頼関係が深まり、自律的な問題解決能力が育まれます。
このアプローチは、無用な競争や摩擦を避け、温かく支え合う健全な職場環境を築き、最終的に組織全体の生産性向上にも繋がります。
最後に
アドラー心理学は、単なる心理学の理論に留まらず、人間関係、特に育成の現場において強力なツールとなります。
「人はだれしも、特別な存在であると認められたいと願っている」というアドラーの言葉は真実です。
しかし、その「承認欲求」を満たす方法が、競争や依存を生む「賞賛」であってはならないのです。
感謝と共感を軸としたコミュニケーションは、相手の成長を促し、良好な人間関係を築く上で最も効果的な手法です。
ぜひ、この機会にアドラー心理学の視点を取り入れ、あなたの育成スタイルを見直してみてください。
そして、『嫌われる勇気』や『幸せになる勇気』といった著書を手に取り、実生活での活用方法をさらに探求してみることを強くお勧めします。
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部下・後輩から尊敬されたい方は以下の記事も役に立つと思うので、ご確認ください。
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