- アドラー心理学でいう教育とは?
- アドラー心理学で褒めること・叱ることを否定する理由って?
- 賞賛・叱責なしで、どうやって人を育てるの?

しろろ
こんにちは、しろろです。
アドラーの著書『嫌われる勇気』をご存じでしょうか?
有名なこの著書を通じ、アドラー心理学の深い洞察を知っている方も多いでしょう。
しかし、実際の現場—特に後輩やチームメンバーの指導において—その理論をどのように活かすか悩んだ経験はありませんか?
アドラー心理学では、「ほめること・叱ること」を否定します。人を褒めず、叱らないで、どのように育てればよいのでしょうか。
この記事では、アドラーの教えに沿った賞賛・叱責なしで人を育てる方法をお伝えします!
前回の投稿では、アドラー心理学でポイントとなる考え方を紹介しました。ご興味がありましたら、ご確認いただけますと幸いです。
アドラー心理学が描く教育の本質
アドラー心理学では、人々の自立と社会への調和を教育の目的としています。
そのためのポイントは、以下の2種類の目標に分かれています。
- 行動面の目標
- 自立する
- 社会と調和して暮らす
- 心理面の目標
- 「私には能力がある」という意識をもつ
- 「人々は私の仲間である」という意識をもつ
教育において、これらの目標を達成することが大切です。
向上心を利用して、自立を促進する
人は「無力な状態から向上したいという欲求」を持っています。
たとえば、新入社員が早く活躍したいと思うのは、向上心の表れです。
後輩が一人前のビジネスパーソンになるよう、フォローしましょう。
人間知を習得して、社会と調和する
仕事のスキルだけでなく、自身や相手のあるべき姿を理解する「人間知」も学ぶ必要があります。
職場では大勢の他者がいるので、協力して働くために、人間を知る必要があるからです。
アドラーは、人間の悩みは全て「対人関係」によるものだと考えます。業務ができるようになっても、人との関りで悩み、生きづらさを感じる人が大勢います。
同僚と良好な関係を築くために、人についても学ぶ必要があるのです。
賞賛・叱責のメリット
賞賛・叱責を受けると、共同体で特別な存在になれる
人は共同体の中で「居場所」を得たいと考えています。
褒められることで、自分は特別な存在だと感じ、居場所を確認できます。
褒められない人は「褒められなくてもいいから注目されたい」と考えるようになり、悪いことをして叱られようとします。
自分の存在が認められないより、叱られたとしても居場所を確保したいと人は考えます。
賞賛・叱責のデメリット
褒めることは争いを生む
「褒められるためでも、努力をするならいいではないか」という声があると思います。
しかし、褒賞を目的にすると、その共同体内で競争が生まれるので問題になります。
たとえば、マラソンで「ライバルを倒す」という目的に変われば、勝利を目指すあまり不正行為が生じる可能性もあります。
人々との協力を第一に考える共同体であれば、問題行動は起きないはずです。

叱ることは安直な行いである
叱責は短絡的な手段として、相手に一方的な価値観を押し付けるリスクがあります。

しろろ
物を蹴ったり、声を荒げたり、泣くなどして相手を威圧し、自分の主張を押し通そうとする人がいませんか?
人に手を出してはいないですが、このような行動は時間も労力もけずに自分の要求を押し通す暴力的なコミュニケーションです。
暴力的な力で人を押さえつけようとしているので、叱ることは怒ることと同じなのです。
たとえ「冷静に叱っている」と主張しても、受け手は「攻撃されている」と感じやすく、結果として信頼関係が壊れる原因になります。

共感・感謝による育成アプローチ
では、賞賛・叱責に代わる効果的な育成方法は何でしょうか?
それは「共感」と「感謝」をベースにしたコミュニケーションにあります。
ありのままの他者を受け入れる
社会心理学者エーリッヒ・フロムは、下記の言葉を残しました。
尊敬とは、人間の姿をありのままに見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力のことである
尊敬とは、その人が、その人らしく成長発展していけるよう、気づかうことである
私たちは目の前の人を変えようとせず、相手自身の価値を見出します。
誰かから「そのままの自分」を認めてもらう経験は、自己肯定感の向上により前向きな成長を促します。
ありのままの相手を知るために、他者の関心事に興味を持ちましょう。自身にとっては、他者の関心事はつまらないと感じるかもしれないです。
相手にとっては面白いものなので、間違っていると否定せず、共感により他者へ寄り添いましょう。
賞賛ではなく、「事実+感謝」を伝える
具体的な行動に対するフィードバックは、「褒めるだけ」よりも効果的です。
例えば、後輩の活躍で仕事が成功した場合を考えます。上司は下記の言葉をかけました。

上司A
よくやった。すごい。
上司Aの誉め言葉は、相手の上辺しか見ていない印象を受けます。

上司B
依頼者への丁寧な説明のおかげでプロジェクトが成功しました。ありがとうございます。
上司Bのように、成果の根拠(事実)を明示し、感謝を伝えることが重要です。
本人は自分の努力が正当に評価されていると実感し、次の行動へのモチベーションが高まります。
一緒に考えて、問題を解決する
問題が起きたときは、単に「叱る」のではなく、その背景や理由を聞き、一緒に解決策を考えましょう。
たとえば、後輩がデスクの整理を怠っている場合を説明します。

上司A
なにをやっているんだ。片付けろ。
上司Aの発言は、相手に共感せず、自分の価値観を押し付けています。相手は怯えて委縮してしまう可能性があります。

上司B
デスクの片付けをよく忘れてるようだけど、理由があるのかな?

部下
申し訳ありません。
仕事でいっぱいいっぱいになると片付けられなくて…。

上司B
仕事が忙してくても、デスクを片付けられる方法を一緒に考えてみようか。
〜デスクのきれいにする方法を検討中〜

上司B
では、〇〇で対応していきましょう。
一緒に考えてくれてありがとうございます!
上司Bの発言は、相手の意志を引き出そうとしています。上司Bは相手の立場を知り、具体的な対策を一緒に考えようとしてくれています。
このように、共感を持って相手の話に耳を傾け、具体的な改善案を共に模索することで、信頼関係が深まります。
まとめ
アドラー心理学では、「ほめること・叱ること」を否定します。賞賛は競争を誘発し、叱責は安易な手段であるためです。
アドラー心理学が考える「教育」では、賞賛・叱責に頼らずに以下の3点を実践することにあります。
- ありのままの受容:相手自身の価値を認め、その存在を尊重する
- 事実+感謝のフィードバック:具体的な行動に根拠を持って感謝を伝える
- 共に考える姿勢:叱責せず、叱責ではなく一緒に解決策を見出す
このアプローチにより、後輩やチームメンバーの自律性を育み、組織内で健全な関係を築くことが可能になります。
賞賛や叱責に依存しない育成法は、無用な競争や摩擦を避け、温かく支え合う環境作りに最適です。
最後に
人はだれしも、特別な存在であると認められたいと願っています。
しかし、賞賛が当たり前の環境では競争が生まれ、場合によっては不正が生じるリスクがあります。
逆に、感謝と共感を軸としたコミュニケーションは、相手の成長を促し、良好な人間関係の実現する効果的な手法です。
ぜひ、アドラー心理学の視点を取り入れて、「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」といった著書を手に取り、実生活での活用方法を探ってみてください。
アドラー心理学にご興味があるかたはこちらの記事もおすすめです。
部下・後輩から尊敬されたい方は以下の記事も役に立つと思うので、ご確認ください。
この記事が参考になったら、ぜひコメントやシェアをお願いします!
X(旧Twitter)でも情報発信をしているので、しろろlabをフォローして、応援していただけると嬉しいです。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
引き続きよろしくお願いいたします!
※参考文献:
岸見一郎・古賀史健著『嫌われる勇気』
岸見一郎・古賀史健著『幸せになる勇気』